弦楽器の手入れ・保管方法
概して、日本の気候は夏季が高温多湿となり、特に梅雨時の湿度の高さは周知の通りです。逆に冬季は乾燥し、暖房を使う室内ではより乾いた状態になります。
本来、地中海性の気候の中で育った文化であるヴァイオリンは、日本の気候に適しているわけではありません。
このような環境の中で、より良い音を楽しんでいただくためには、ヴァイオリンの持つ特性を理解し、正しい管理、保管をしていただく必要があります。
ヴァイオリンという文化遺産を後世にわたって残していくために、楽器を大切に扱い、良い状態で管理していくことが、使用する私たちの責任であると言えるでしょう。
弦楽器保管時の温度・湿度管理について
湿度が高くなると楽器は鳴らなくなります。
まず始めに結論を言いますと、弦楽器を保管する場所は夏季はエアコン、除湿機を利用して乾燥させてください。湿度20~24℃、湿度50%前後が目安となります。
ヴァイオリンは主に、楓材、松材からなっています。これらは湿度により膨張、収縮を繰り返しています。湿って膨張すれば鈍い音になり、乾いて材料が絞まれば、軽く張りのある音になります。
梅雨時から夏にかけて鳴らなくなったヴァイオリン、チェロ、ヴィオラが秋から冬にかけて鳴ってくるのはこのためです。
高温多湿環境では楽器が分解する!?
過度に高温多湿状態に置かれたヴァイオリン、ヴィオラ、チェロたちは、鳴らなくなる状態を通り越し、板のはがれ、変形を招くこととなります。
ヴァイオリンなどの弦楽器は、板と板、またほとんどすべての部分の接着には動物の骨髄から抽出されたニカワが使用されています。ニカワは、高温湿潤状態で溶解し、常温乾燥状態で凝固するという特性を持っているため、昔から天然の接着剤として用いられています。このため、気温の高いところ、湿度の多いところで保管するとニカワの接着力は弱まり、板が剥がれたり、割れの修理の跡が開いたり、様々なトラブルの原因となります。
真夏の車の中に置きっ放しにして、楽器がバラバラに分解してしまったというような話も耳にします。
ネックの角度と湿度の関係
絃を張った状態は、いつも楽器に大きな力がかかっています。従って、湿度の多いところに長時間おかれると、接着力が弱まることと、ネック(スクロールから本体までの指で押さえる部分)と指板の材質の膨張率の相違、絃の張力によってネック全体が下方に落ちていきます。
ネックの角度(アングル)が落ちていくほど、駒の高さは相対的に高くなり、絃と指板の間隔が広く押さえづらくなってきます。
この場合、駒を低くするなどの方法で対処ができますが、過度にネックが下がってしまったり、乾燥してきてネックが元の角度に戻らない場合には、ネックをヴァイオリン本体から外して、ネック上げという大掛かりな修理は必要になります。
また、ネックの角度は落ちるだけに留まらず、ネックが外れてしまったり、その際に裏板のボタン(ネックと接触する部分)が割れてしまうということが夏季には多く見られます。
ニスは弦楽器の命・・・ニスと温度の関係
ニスはヴァイオリン、チェロ、ヴィオラなどの楽器の表面を美しく飾るとともに、湿気や汚れから守る役目を果たしています。また、その質によって楽器の音色を大きく決定する要素の一つになっています。
ニスの質によって程度の差はあるものの、高温状態におかれた弦楽器はニスに気泡が生じたり、溶解、ひび割れ、薄利など取り返しのつかない事態を招くことになります。特にイタリアの新作楽器など、良質ゆえに柔らかいニスを使用した楽器などには注意が必要です。
大切なニスを守るため、日頃できるだけ表面を手で触れないようにしていただくのは勿論、熱くなる場所での保管は避けなければなりません。また、日の光に長時間さらされるとニスの色の変色にもつながります。
高温多湿は弦楽器の天敵です。
高温多湿に置かれた弦楽器には様々なトラブルが生じる可能性が非常に高くなります。 日本の夏季の気候は高温多湿であることを認識していただき、楽器のための環境を整えていただくことをお勧めします。
ヴィルトゥオーゾでは修理等の受付・見積もりは技術的知識にも精通する営業コンサルタントが対応できる体制となっており、お客様の大切な楽器に適した修理内容をご提案させていただきます。また定期的なメンテナンスのご提案もしております。 ヴィオラ・チェロ・バイオリンの各種修理に対する他お問合せは下記の電話番号、問合せフォームよりお気軽にお問合せください。ヴァイオリンを愛するヴィルトゥオーゾのスタッフがお答えいたします。



