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前回では、時間をかけて作られる、伝統あるヴァイオリンの製作工程についてご紹介しました。第3回目は、プレイヤーやコレクターがいつか持ちたいと憧れるような、骨董品としてのヴァイオリンの魅力についてお伝えしたいと思います。
一般的に「骨董品」と言われるものは、古くて希少価値が高く、道具としての価値よりも美術品として価値を認められる物品のことです。例外もありますが骨董品の一般的な定義は、100年以上経た美術品を指すと言われ、その多くは流通しておらず、状態による価値の差もあるため、それらに定価というものは存在しません。そのため、相場価値はあるものの、たくさんの物品が売買されるオークションなどでは、実際の価値を大幅に超える金額で取り引きされることも稀ではありません。
では、ヴァイオリンの場合は、どのようなものが骨董としての価値を持ち、どんな特徴があるのかをご紹介したいと思います。
1.製作される地域の特徴
世界に流通する楽器には様々な種類がありますが、大きく分類すると、個人製作家が全てを一人で製作したもの、個人製作家や研鑽を積んだ製作家の監修の下に、その工房製楽器として製作されたもの、さらにたくさんの職人による分業などで、大量に生産されるものなどがあります。
中でもイタリアで作られるヴァイオリンは、基本的に個人製作家が一人で、最初の工程から仕上げまでを行う、という歴史的な流れや伝統があるため、製作者によって作風が異なります。その特徴は、使用するモデルや製作家の意向によって、f字孔やスクロールなどの細部に表れますので、それこそが製作者ならではのものとして見て取ることができます。
そして、個人製作家の弟子たちに至っては、師匠よりその作風を学び真似をし、鍛錬を重ねますので、独立してもなお、似通った特徴を持つことが多いようです。
その伝統の歴史が、クレモナ派、ミラノ派、ナポリ派、トリノ派、ボローニャ派などと呼ばれ、製作地域の特徴となる訳です。
もちろんイタリアだけでなく、フランス、ドイツ、イギリスなどでも異なる流派が存在し、その受け継がれた作風こそが、その地域、その国ならではの特徴を持っています。
2.鑑定のポイント
前述のように地域の特徴などから様々な特徴を持ったヴァイオリンは、その作りや歴史的背景を合わせて、日々研究が進んでいますので、その専門知識と多くの経験を持つ専門家が、楽器の鑑定と呼ばれることを行うこともありますが、骨董的な価値を有する楽器において、100%その鑑定が正しいと証明する手段はありません。ただ、世界的にその専門知識や鑑識眼を認められた専門家の意見書(鑑定書)が楽器鑑定のポイントになることもありますし、そういった専門家に意見を求めることもできます。
鑑定においては、上記にもお伝えしましたとおり、作風や使用モデルがポイントになりますので、簡単に誰でも鑑定が行えるということはありませんが、最近では、使用木材の年輪や含有炭素の質量などを計測することで、科学的に年代を特定することも可能になってきているようです。それらの科学的な根拠や、深い専門知識が合わさって、ヴァイオリンの鑑定が高い確率で行えることもあります。
3.コレクター
骨董品的な価値を有するヴァイオリンともなれば、多くのコレクターが存在します。たとえば資産家のような人が一個人で収集することもありますが、各国の王室や、財団、博物館などが収集している場合もあり、有名になると「~コレクション」という形で呼ばれ、一般に公開されることもあります。
コレクターの多くは、海外のオークションや他のコレクター、楽器ディーラーから楽器を入手するようですが、もちろん専門知識を持たない人でも手に入れることはできます。ただ専門知識がないと、価格に対する価値の正当性を判断するのが難しいため、専門店や信頼できるディーラーを通じて入手することが、結果として安心と言えます。
4.オークション
さて、上記にも触れましたオークションでは、様々な楽器を見ることができます。集まる楽器はオークションの主催者によって異なりますが、様々な国や地域の楽器が数多く集結します。そのほとんどは、古いヴァイオリンであることが多いので、事前にある程度の選定や鑑定を主催者が行いますが、オークションへの参加者は開催の数日前に現物を手に取り確認できる、プレビューという機会があります。その機会に楽器の状態などを確認し、いざオークションへと参加する訳です。
価値ある楽器やお値打ちな掘り出しものには、競合する相手がたくさんいますので、欲しい楽器を確実に手に入れるためには、経験や勘、駆け引きのようなものが必要になると言えます。
現在の一般的な市場では、かの有名なストラディバリウスで4~5億円、イタリア製の骨董的な価値が高いオールド楽器と呼ばれるものであれば数千万円、新作でも数百万円という価格での取り引きが行われています。
骨董品としての価値がある楽器や、その背景についてお話してきましたが、素性のはっきりとした楽器を正統的な価格で手に入れるためには、信頼できる楽器店やディーラー、専門家の意見を参考にすることが大切なようです。時間を経た楽器には素晴しい魅力があり、希少価値の高い楽器にこそ出会えた喜びはひとしおでしょう。しかし、新作と異なり価値の判断が難しいということも覚えておきたいポイントです。