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2015.10.29

(連載)WEBLOG「奏 KANADE」第1章「クレモナ音楽紀行」VOL.1

(クレモナを歩く)
第1回目は、歴史あるヴァイオリンをますます知っていただくために、ヴァイオリン製作の街、職人の街であるイタリアのクレモナについてご紹介いたします。私どものこれまでの旧WEBサイトや、Facebookでも何度もご紹介してきておりますが、クレモナはヴァイオリンを語る上で必須のワードである「ストラディヴァリ」の活躍した街でもあります。現在も、この街で数多くの製作家が切磋琢磨し、洗練されたイタリアントーンを日々追い求めているのです。私たちは、この街の優秀な職人たちと深く交流を持ち、その人間味あふれる魅力的な楽器を皆様にお届けしております。

クレモナは北イタリアのロンバルディア地方にある石畳が美しい小さな街です。中心にクレモナ大聖堂が位置し、その周辺に人々が愉快に集うイタリアらしい雰囲気のある街です。クレモナがヴァイオリンの街と言われる由縁は、16世紀に遡り、アンドレア・アマティという名前に行き当たるところからです。現存する最古のヴァイオリンと考えられるものが1565年のアンドレア・アマティ作のものであると言われており、ブレシアのガスパロ・ダ・サロが始祖であると考える説とともに、ヴァイオリンを最初に製作した製作家の最有力となります。アンドレア・アマティを祖とするアマティ・ファミリーは家族内のみで伝統を継承していきますが、その名声を高めたニコロ・アマティの時代から徒弟制度の形態となり、やがて師を凌ぐ存在としてアントニオ・ストラディヴァリに脚光があたり、クレモナのヴァイオリン製作はこの時代に世界から注目されるようになります。17世紀後半から18世紀はクレモナのヴァイオリン製作が最も花開いた時期であり、アマティ、ストラディヴァリだけでなく、ガルネリ・ファミリー、ベルゴンツィなどのビッグネームを輩出していきます。若干の浮沈はあったものの、およそこの伝統は19世紀初頭のストリオーニ、チェルーティあたりまで継続し、その後のトリノ派へバトンタッチするまでの長きにわたり、ヴァイオリンの代名詞として語られる街であったのです。

これら、クレモナを代表する名器を実際に目にすることができるのが、新しく完成したMUSEO(楽器博物館)。最古級のアンドレア・アマティからストラディヴァリ、ガルネリ・デル・ジェスまで時代をたどりながら鑑賞していくことができます。また、街にはストラディヴァリの工房のあった跡地や、ストラディヴァリ像、記念碑など観光スポットもあります。ただ、現在のクレモナを訪問する醍醐味は、実際に製作している工房を見学することです。製作家によっては気さくに、観光客を招いて見学させてくださるところもあります。現代のクレモナは、往時の勢いが再燃したように多くのヴァイオリン作りに溢れています。19世紀に衰退したクレモナのヴァイオリンが、歴史と伝統を取り戻していくお話はまたの機会に。
(VOL.2につづく)https://www.virtuoso.co.jp/post-795/